文化と景観をつなぐ架け橋:アル・アザール(エイプリル社ステークホルダー諮問委員会メンバー)


エイプリル社ステークホルダー諮問委員会メンバーとしての役割に独自の視座を与えています。「環境は今、危機に瀕していると思います」と、アル・アザールは言葉を続けます。

「環境のダメージは文化のダメージ、霊魂と精神そして文明へのダメージでもあると思います。その思いから、私はSACメンバーになったのです。このダメージを、小さな一部分にすぎないけれど、癒す手伝いをしたいと思ったのです。エイプリル社は、少なくとも、私が必要だと思う変化への扉を開こうとしていると思います。」

アル・アザールは、リアウ州カンプンの小さな村で生まれました。村は豊かな森林に囲まれています。近在の学校に通った少年時代、村の子ども皆と同じく、いつも遊び場は森でした。「自然」は三つ子の魂に深く刷り込まれたのです。成績が良かったアル・アザールは、プカンバル大学に進学しインドネシア文学を学びました。アル・アザールは指摘します:「マレー文化の歴史の位置づけは西洋と同じではありません。西洋では歴史は文字に書かれた記録ですが、マレー文化における歴史は、詩歌、物語、子守歌として暗唱されるものなのです。」

「私がパントゥンを愛する理由は、ここにあります。そして、マレー口承伝統への私の関心の源もそこにあるのです。もちろん、子供時代の環境ともつながっています。パントゥンの多くは、人間、コミュニティ、生態、世界の間の本質的つながりを、世界観として表現しています。そして、この口承文学には、景観がどのように管理可能かについても教訓が示されています。つまり、人と自然のバランス、双方に便益となるようにすることです。今日の私たちは、その理解を失ってしまったようにみえるのです。」

1989年、学士号を取得し家庭を築きプカンバルで文学を教えていたアル・アザールに、オランダのレイデン大学の修士課程に進学するチャンスが舞い込みました。「オランダの寒さはカルチャーショックでした」と笑うアル・アザールは、人文学部で2人のインドネシア人学生の一人として東南アジア文学を専攻し、修士号を取得後はマレーおよびインドネシア現代・古典文学の講師となりました。

オランダ暮らしが4年になったころ、博士課程への進学の機会がありました。しかし「ちょうど、インドネシアは政変の真っただ中にあり、私は母国に帰ることにしました。インドネシアの政治の変化を直接肌身に感じたかったのです。私は、プカンバルに戻り、マレーの伝統的口承文学の研究を続けるほうを選んだのです。」文字に書かれた文学と口承文学は別物だという認識が文学が根差す生態系に目を開かせてくれたと、アル・アザールはいいます。「口承文学では、森と社会は分離できないものです。物語に耳を傾けるとき、木々も鳥も花も、そして人間も『一つのもの』として見えてきます。文字文学との決定的な違いです。」

口承文学はメタファーに富んでいます。「大地は、単に土ではなく、母です。空は父なるものの象徴です。そして、空と大地をつなぐ架け橋が木です。私にとって、今日のインドネシアの環境問題は、単に量や規模の問題ではなく、人間が森林や広く環境との間に関係を築く道が失われていることなのです。」

経済発展を重視した過去の政策は、天然資源の大規模な破壊をもたらしました。狙いは良くても、方法が間違っていたのです。「政府は、大企業が天然資源を使用することで、国全体に波及効果が生まれると期待したのですが、富の再分配がうまくいかなかったために、ことは予想通りには運ばなかったのです。ここに問題がありました。」

研究者であると同時に根はスピリチュアルなアル・アザールは、自分ならまったく新しいパースペクティブを持ち込めると考え、SACメンバーになるという思い切った行動に出ました。周囲もアル・アザールなら可能だと期待しています。「一般の人々にもっと門戸開放するよう働きかけたいと思いました。人は、より良い暮らしという夢を実現させるために大企業に入ります。会社はある種の変化を可能にする道を開こうとしている、私はその変化が必要だと感じている、そして私は会社に助力できる――三拍子そろったと私は感じたのです。」

アル・アザールは、リアリストでもあります。大企業は簡単には変わらないこともわかっています。「私たちは、うわべを取り繕った世界で、存在しなくなれば万事が良くなるという仮定の上に生きていくことはできません。ベストの選択肢は、変化が望ましいのであれば、大企業が変化すること、望ましい方向への変化を手助けすることです。たぶん、SACメンバーとして、私はエイプリル社が(私の思う)正しい方向に進む一助となる様々なアイディアを提供できるでしょう。今日の環境関連の議論の多くは過去のあやまちについてですが、私たちのすべき仕事は、将来のあやまちを回避することです。行動の変化を可能とし、透明でオープンな状況を実現することです。ビジネスは、そこで働く人々、周囲のコミュニティ、そしてビジネスの基盤となっている景観と同様に、環境の一つの構成要素です。」

アル・アザールは根っからの楽観主義者です。ビジネスと環境の間の力関係には課題が山積みであること、そして公共政策はもっと有効なものとなるべきことを認めつつも、変化は始まっており実現に向かっていると信じています。「問題は、遅すぎる速度とはどのくらいの遅速かということです。現在はのろのろペースですが、将来的には加速するだろうと希望を持っています。きっとスピードアップすると確信しています。」

Sungai Dua di atas bukit

Elang bersarang di kuala

Bulan dua sekali terbit

Pilih yang terang cahayanya

(2本の川が丘を走り

入り江には鷲が巣を作る

2つの月がともに上るとき

明るいほうを選びなさい)


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